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2018

庚申堂の湧き水

庚申堂の湧き水

2018年6月下旬、いまでも地域の生活の一部になっている湧き水、庚申堂(こうしんどう)を訪ねました。

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御前崎市立白羽小学校から東へ向かい、路地を1本入ったところ、白羽地区の中原という地に、「お庚申様(おこうしんさま)」と呼ばれ、地元の人が古くから大切にしてきた湧き水があります。

そこではなんと、いまでも地域の人が洗濯をしたり、野菜を洗ったりする慣習が残っていると聞き、真相を確かめるべく夕暮れ時に現地に行ってみました。

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そもそも庚申とは、「かのえ・さる」とも読む干支のひとつ。全国各地でお堂などに祀られていますが、ここ中原では江戸時代の飢饉のころ、豊かな水があふれ出るこの地が繁栄するようにと祈りを込めて、庚申様の供養塔が建てられたようです。200年も前から人々の暮らしを支えてきた湧き水。なんだか感慨深いものがありますね。

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ふと水路の脇に目をやると、そこにはエプロンにサンダル姿の近所に住む主婦が2人。洗濯カゴを傍らに、しゃがんでおしゃべりしていました。古きよき時代へタイムスリップしたかのような光景。どうやらウワサは本当だったようです。

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お話を伺ってみると、洗濯機で洗った洗濯物をすすいでいるところで、これから家に持ち帰って干すそう。洗濯機のなかった時代からの習慣がまだまだ根強く残っており、朝や夕方になるとこうして庚申堂に集まっているということでした。「ここの水はとても冷たく澄んでいて、野菜を洗ったり、冷やしたりもするのにも向いている」のだとか。

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人と人のつながりが希薄になったといわれる現代でも、全自動洗濯機に頼り切らず、家事をしながらのご近所さんとの井戸端会議を、ささやかな交流のひとときを大切にする。世の中がどんどん便利になって、すっかり見かけなくなったその光景には、失くしてはいけない何かがあるような気がしました。

UMICO編集部
2018年7月